――― 瞳は空に
辺りはゆっくりと光を落とし、西の空が茜色に染まる。
広がる薄い雲も色づき、天に大きな絵が描かれているようだった。
空と同じように赤く染まった街の外れ。
そこにある小さな原っぱに、座ったまま動かない影が1つ。
前に足を投げ出し、自らの両手に上半身の体重を預けた状態で、
どこか遠くを見つめているその影の主は…トラップである。
彼は、何をするでもなく、その明るい茶色の瞳を暮れ行く空に向けている。
微かに子どもの笑い声が響いていたが、トラップの耳には届いていなかった。
……おれは、なんでここから離れられねぇんだ?
晴れたときならいつでも見られるような夕方の風景。
暗い夜が訪れる前の、暖かいがどこか寂しい瞬間。
いつもと同じはずなのに、なぜか今日は目が離せなかった。
ま…こんな日があってもいいか。
1つため息をついて、ごろんと寝転がったトラップは一瞬目を閉じる。
そしてゆっくりと目を開けて、そこに再び夕日を映した。
遠く空にとらわれた瞳。
それは、夕日と同じ色に染まっていた。
fin
――――――――――
≪2004.8.24に書き上げ≫
「黒の書」500Hitを踏んでくださった誠(道草千里)さんのリクエスト。
「黄昏ているトラップの小説」ですが…超ショートストーリになってしまいました。(汗)
お届けが遅くなって申し訳ありませんでした!
…ちなみに、この挿絵話の挿絵は
ここ
にあります〜。
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