―――  毎日




 ただ、山に囲まれ
 ただ、森に囲まれ
 いつも同じ静かな毎日を過ごす


 狩りへ行き、木を切り、畑を耕し、ほんの時々町へ出る
 毎日、何も変わらない
 何かしたいこともない
 何となくこのままでいいやと思っていた
 今のまま同じ毎日を繰り返していればいいと思っていた


 でも本当は、何か求めていた
 心の底に閉じ込めて気づかないふりしてたけど、何かを求めていた
 この日常を壊してくれる何かを



 ある日、いつもと同じように町へ出た
 女たちが作ったタペストリーや帽子などを売りに、町へ出た
 そこで俺は、いつもと違うものに出会った
 一際大きな体つきにがっちりとした体格
 豪快で明るい振る舞いに親しみやすい笑顔
 背に大きな剣を背負ったその男は
 つまらなそうな顔をしてるな、と店番をしていた俺に話し掛けてきた
 びっくりした
 頭の隅で本心を見透かされたと思った


 彼は冒険者だった
 冒険者なんて町にくれば珍しくもない
 でも彼は、近寄りがたい雰囲気を持ってる他の冒険者とは違った
 生き生きしていて、満足そうで、温かくて・・・強かった
 店番をしながら彼の冒険談を聞いた
 冒険とは呼べないような小さな事から
 危険なモンスターと対峙したようなすごい事まで
 ぼくが町を後にするまで話してくれた
 別れる時、彼はこう言った

 いつもと同じなんてつまらないぞ
 何か探してみたらどうだ

 俺は何も答えられなくて、ぺこりとお辞儀して家に帰った


 それから頭の中は彼の話でいっぱいだった
 毎日がいつもと違う
 危険だけどそれ以上に魅力的な生活
 その夜は眠れなかった


 次の日の朝から
 俺の毎日は毎日じゃなくなった


 冒険者になろう
 そう思って故郷を出た



 俺は何かを手に入れたんだ
 それなりに気に入っていた故郷での毎日
 でも、それを壊してくれる何かを


 ただ、冒険する
 でも、毎日が楽しい
 いつも違う未知の毎日を過ごす







――――――――――
≪2001.3.28にお届け≫
誠さんに「黒の書」掲示板一番乗りのキリ番で差し上げた詩。
お題は「ファンタジー世界における夢を求める若者」の詩、でした。リク内容にあってるかちょっぴり心配です。(苦笑)
どうもありがとうございました〜☆





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