―――  かくれんぼ




 それは何のしがらみもない子どもの頃のこと


   もーいーかい
   まぁだだよ

  じゃんけんまけてオニになっちゃった
  でも、トラップもクレイもいつもかくれてるとこなんてかわらないんだから
  
   もーいーかい
   もーいーよ

  よし、すぐにみつけてやるんだから
  いっつもトラップがかくれてたしげみの中
  あれ、今日はちがうとこにかくれたんだ
  ちょっとは考えるようになったんだ
  いっつもクレイがかくれてたへいのうら
  あれ、クレイもいない
  ふたりともどこにかくれたのかな
  こうえんの中ってきめてるからこの辺にいるはずなんだけどな



  二人が隠れたのは公園で一番高い木の上で

    おいクレイ、ここならぜったいみつからないぜ
    マリーナみつけるのうまいからな

  葉っぱの陰で下から見えないように気をつけて、枝の上に二人で座る
  顔を見合わせ声を殺して笑いあう

    今日こそマリーナにみつからないな
    あったりまえだろ、おれがひとばん考えてやっと思いついたかくればしょだぜ
    あぁ、でも今日はほんとに天気がいいな
    ほんとだな



  おいてあったどかんの中
  ここにもいない
  ベンチのうしろ
  ここもハズレ
  どこにもいない
  おかしいな、かくれるとこなんてそんなにはないはずなのに
  クレイもトラップもいない
  なんでだろう
  ふたりともどこにかくれたのかな
  ふたりとも、どこにいっちゃったんだろう
  いなく、なっちゃったよ



    ……うわっ
    あ、あれ、ここどこだ

  いつのまにか木の上で寝ていた二人
  高い所にあったはずの太陽も、いつの間にか傾いている

    ねちゃってたんだ
    よくおちなかったよな
    あれ、マリーナまだおれたちのことみつけてないんだな

  木の上から二人が見下ろすと不安そうな顔のマリーナが見える

    おい、クレイ
    うん

  二人でわざと木を揺らして
  がさがさがさ
  その音にマリーナがはっと上を見上げる
  泣きそうだった顔に笑顔が戻る

    あー、クレイにトラップ、みぃつけた
    ちぇっ、みつかっちまったぜ
    けっこううまくかくれてただろ  

  マリーナの言葉に二人は笑いながら木からおりる

    せっかくじょうずにかくれててもしずかにしてなきゃ

  くすくす笑っていうマリーナに、二人は顔を見合わせる
  それでもマリーナの泣きそうな顔を見てしまっていたから
  マリーナが女の子だったことを思い出したから
  二人は笑ってごまかした



 三人でかくれんぼをした思い出の公園で、ベンチに座ってあの木を見上げた
 何も知らなかったあの頃
 思い出すと笑みがこぼれる
 あの頃はわからなかったけど
 今ならわかる
 大事に、されていたんだな、と


  もーいーかい

 小さな声でつぶやいてみた

  まぁだだよ

 どこかで微かに応える子どもの声が、私の耳に届いた気がした








――――――――――――

 椎杜ぐん様にいただいた小さい頃のマリーナの詩ですv
 小さい頃のマリーナの詩をとリクエストをしたところ、この詩と「旅立ち」の詩をいただきました。
 なんと、「旅立ち」の方が“小さいマリーナ”じゃなくなっちゃったから、ってことでわざわざこちらの詩もくださったんですよ♪ 小さいマリーナたちの暮らしの一部が覗けたような気がします。
 ホントにありがとうございました!












BACK

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送