―――  名残夏




 今年も夏が過ぎていく。

 長かった梅雨の時期が終わり、待ちに待った夏がきて。
 今年もみんなでいろんなことをしたね。
 暑い日差しの中、皆で海にも行ったし、夜には花火もしたね。
 お祭りにだって行ったし、かき氷も食べた。
 突然の夕立に降られて、皆でびしょぬれになって笑いあったりもしたね。
 意外に浴衣の似合うあなたを見て、ちょっとびっくりもした。
 そして……。
 そして二人で夜空を見たね。

 夜空に輝く満天の星。
 シルバーリーブのはずれの丘の上に、二人で並んで寝転んで。
 最初はふざけ合いながら流星を探してた。
 でもそのうち、どちらともなく無言になって……、二人で静かに夜空を見上げた。
 見上げた夜空は、とてもとてもきれいだったけど、見ていて急に寂しくなった。
 夜空の星は、一つ一つとてもきれいに瞬いていたのに。
 見ていて急に切なくなった。
 星たちが静かに輝いている姿が、なぜだかとても切なかった。
 幻想的な静けさの中、あなたが急に遠くに行ってしまった気がした。
 あまりにも幸せ過ぎて、恐くなったせいかもしれない。
 私の微妙な変化に、隣にいたあなたも気づいてくれたね。
 そして、大丈夫って言う代わりにそっと私の手を握ってくれた。
 驚いてあなたを見ると、あなたは少し照れた顔をして、私から顔を背けた。
 ちょっとしたあなたの動き。
 そんな小さなことが嬉しくて、あなたといることが楽しくて、……あなたのことが愛しくて。
 そしてそんな風に思えた自分が、何だかちょっとくすぐったくて。
 幾千もの星の中からあなたに巡り合うことのできた奇蹟に、目が眩んだ。

 想いを気づかせてくれてありがとう。
 私の想いに気づいてくれてありがとう。
 私にこの感情を与えてくれたあなたに、どうやって感謝の気持ちを伝えればいいだろう。
 いくら考えてもわからなくて、結局私もあなたの手を握り返した。

  ずっとずっと、いつまでも。
  二人でこうやって一緒にいたいね。

 笑ってそう言ったら、照れた顔しながらあなたも笑い返してくれたね。
 あなたの笑顔が嬉しくて、このまま足早に去っていく夏がちょっと恨めしかった。
 あなたと二人、いろんな思い出ができたのに。

 あなたと初めて出会ってから、夏はもう何度も過ぎていたけれど。
 この夏は特別。
 今までの夏とは違う。

 初めて想いが通じ合って、みんなに隠れて二人で出かけて。
 結局みんなに心配されて探されて。
 小さなことが、いつもよりもっともっと楽しかった。
 きっとあなたと二人で感じることができたからね。
 初めて二人で過ごした特別な夏だから。
 きっとずっと忘れないね。

  ……せっかくの夏が終わっちゃうね。

 そう言ったら、軽く頭を小突かれた。

  夏は来年も来るだろ?
  それとも夏だけで終わらせる気か?

 ちょっとムスっとした顔で言われて、きょとんとした。
 そして言われた言葉の意味が分かって、思わず顔が緩んでしまった。
 そうだよね。
 これからも一緒に同じ時を過ごしていけるんだよね。
 握った手に力を込めて、ありがとうって気持ちを伝えた。

 幸せな夏をありがとう。
 でも、あなたと一緒に過ごせるだけで、どんな季節だってきっと幸せいっぱいだね。
 ずっと一緒にいられるのなら、この夏だけじゃなく、いつだって特別な時になるね。

 こんな気持ちをくれたあなたに、ありがとうって気持ちを込めて。
 ダイスキだよって想いを込めて。

 夏が過ぎ去ってしまう前に私からあなたへ、とびきりのキスを……。








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 椎杜ぐん様より、01'に残暑見舞いにいただいたSSです!
 「パステル」と「誰か」の幸せなお話ですね。
 私はどちらかといえばトラパス派(70%)に傾いてるんですが、これについてはクレイとパステルで読んでましたv(おい)
 読み終わった後はとってもふんわりして、気持ちがよかったです。
 どうもありがとうございました!!












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