―――  コタツとミカン




部屋の窓がひとり、ガタガタとうるさく鳴いている。
その音を聞いてか聞かずか、パステルは「ふーっ」と深く息をつく。
それから、読んでいた本を閉じ、目の前のみかんに手をのばした。

「やっぱり、コタツにはみかんよね。」

誰に言うでもなく、呟いてみる。
身体はこたつの中にすっぽりと埋もれており、そのぬくさを味わいつつミカンの皮をむきはじめた。

しょり、しょり……。

みかんの皮が剥きにくいのは、まだ酸っぱい証拠。
柔らかく剥きやすいのは、甘い証拠。

これはきっと、甘いみかん。



そんな風に思って小さく笑みをこぼしてみたりする。

すると、ふいに「びゅうっ」と強い風がふき、パステルの身体を一瞬冷やした。
風の入ってきた方角をみると、扉の向こうからトラップがやってきた。

「ふいーっ、さみーさみー。」

言って、パステルの正面に腰をおろす。

「バイト、おつかれさま。」
「おう。」

トラップの頬は、寒さのために赤く染まっている。
すぐさまトラップがコタツに足を踏み入れると、コタツの中の温度が一瞬さがったような感覚がする。

「外、さむかったんだね。」
「あたりめーだろ。冬なんだから。」
「うん。」

そんななんでもない会話が嬉しくて、パステルは剥いたミカンを口に頬張った。

「お、うまそうだな。」

トラップもミカンに手をのばす。

すると、その声で目が覚めたのか。
パステルの隣で猫のように丸まっていたルーミィが起き上がりながら、ねむたげな声をもらした。

「なにが、おいしいんかあ?」
「みかん、食べる?」
「たべるおう。」

それでパステルが、ルーミィの分もミカンを剥き始めたとき、突然足先に刺すような痛みが走った。

「きゃあ!?」

痛み、と思ったが、それは次の瞬間に間違いであることがわかる。

「つめたーい。」

パステルがきっと正面をにらむと、へらへらと笑うトラップがそこに。

どうやら、トラップがパステルの足に自分の凍った足を擦り付けたらしかったのだ。

「もう、冷たいじゃないの。」
「んだよ。おめーらばっか、部屋んなかでぬくぬくしてたくせによー。」
「うう……。」
「てっとりばやく温かくなるのには、人肌が一番っつーだろ。」

そう言いながら、どうにも図にのったらしいトラップが、ここぞとばかりに冷たい足をパステルに絡ませてきた。
パステルは、痛みを感じるほどの冷たさにほんの少し眉をしかめるものの、それほどの寒さの中を歩いてきたトラップにほんの少し同情する。


「みかん、甘くておいしいおー。」


そんな二人の様子に気付かぬまま、ルーミィは口いっぱいにミカンを頬張るのだった。






fin.









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 びんが様から素敵なSSをいただきましたvv
 冬といえば、コタツにミカン! ということで…コタツの中で繰り広げられるほんわかトラパスのやりとりを、にまにましながら読んでしたよ!(笑)
 ルーミィらしい可愛らしいラストにもメロメロです♪
 びんが様、どうもありがとうございましたvv










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