―――  雪だるま




 ふぃー、積もったもんだなぁ。 


 腹の虫のなき声で目が覚めると、外は一面雪だった。 
 太陽がまぶしく白を輝かせる。 
 ……もう、昼飯の時間帯かもな。 
 寝坊したおれを置いて雪遊びにでもいったんだろう、パーティの連中の姿を探して家を出る。 


 するとそこに、巨大な雪だるまがいた。 
「………でけぇな」 
 この年になって、自分の背よりでっけぇ雪だるまを見るたぁ思わなかったぜ…! 
 ははーん、こりゃあノルとクレイの力作だな? 
 ご苦労なこって、まあ。 
 だがこれだけでっけぇ雪だるま(ノルより、もちっとでけぇくらいか?)なら、チビどもも喜んだだろ。 
 ゆっくりと巨大雪だるまの周りをめぐる。と、 
「ゆきだうまぁー!!」 
 はずんだ声が雪だるまの向こうから走ってくる。 
 おりょ。チビルーミィじゃねえの。 
 とっさに顔を出そうとして………それをやめる。 
 へっへへ。かわいいチビがきたんだ。 
 少しおどかしたろーじゃねえか。 
 おれは雪だるまの後ろに隠れて、息をひそめた。 


「ゆきだうまぁ、手ぇもってきたげたお? はい!」 
 手を持ってきてあげた、とは、そこだけ聞くとコワい話だな。 
 だがもちろんルーミィが持ってきた手というのは、そこらに落ちてたんだろう木の枝で。 
 こいつの思いやりにあふれたもんだった。 
 まあ、その「手」を突きさした場所は雪だるま全体のバランスを考えると、どっちかっつうと「足」っぽかったが。 
 チビの身長じゃしかたねえ。 
「こえで、いっしょにあそべうね!」 
 プレゼントしたばかりの手を握っている気配をさせながら、ルーミィは満足げな声をあげた。 
 ……雪だるまと何して遊ぶ気だ、こいつは。 
 いぶかしげに思っていると、ルーミィは歌いはじめた。 


「ゆきだーうまさん、ゆきだーうまさん。にーあめっこしーましょ……」 


 待て。 
 おかしいぞ? ルーミィ。いろいろと。 


 まず、歌詞まちがってんだろ! 
 それから、その遊びを雪だるま相手にやっても、ぜってぇ勝てねえだろ!? 
 それから、べつに雪だるまに手がついてなくても、それはできたんじゃねえ!?? 


 ――おもしれーなぁ、ガキって。 
 おれも昔はこんなんだったんかなぁ…。 
 なんとなくしみじみとしたおれの耳に、あどけねえ歌は流れつづける。 


「わーあうーとまーけおー。あっぷっぷ!」 


 そして止まる、時間。来たる、静寂。 
 にらめっこやってんだろなぁ。真剣に。 


 ……………どんなツラしてんだ?? 


 気になったら、見ずにはいられねえ。 
 おれは音をたてねえよう十分に気をはりながら、そっと体を低くする。 
 おそらくルーミィは、ばかでけぇ雪だるまの顔……上のほうを見てんだろう。 
 覗きこむなら、下からだ。 
 そっ…と、片目だけを雪だるまの影から出す。 


「……………………………………」 


 チビルーミィはうんと首をのけぞらせて雪だるまをにらみつけ、ぷくぷくのほっぺたを両手ではさみ、「さあ笑え!」と言わんばかりに唇をタコみてぇに突き出していた。 


「ぶっ!」 


 あ、やべ。声に出しちまった! あわてて静かに顔を引っ込める。 
 気づかれた、か? 
 ま、でも、しゃーねえよな。おもしろすぎだぜ、あの顔。 
 笑わねえ雪だるま相手に、想像以上に真剣なマナザシ。んで、あのほっぺに口! 
 ああー、か〜わいいよなぁ、ほんと! 
 無言で腹を抱えて笑っていると、ルーミィは急に声をあげた。 


「ゆきだうまぁ、今わあったんかぁ?」 


 ―――え? 
「わあったおね!? ルーミィ聞いたお! 『ぶっ!』ってわぁったぁ!」 
 あのー。もしもーし、ルーミィちゃん? 
「わぁーい、わぁーい! にあめっこ、ルーミィの勝ちぃー!!」 
 そうしてルーミィは、「ぱぁるぅー、しおちゃーん……」と、駆けていってしまった。 


 ああ。 
 しまった。 
 おどかしそこなったじゃねえか。 


「ったく。かなわねえよなぁ………」 
 ははっ、と声をあげて笑う。 
 チビにはまったく、かなわねえ。 
 おめぇの勝ちだ、勝ち。 


 ご褒美に、あいつの大好きな言葉をいってやるとするか。 
 な? 雪だるま。 
 にらめっこに負けた、おめぇの代わりによ……? 





「おおーーーい! 飯食いにいかねぇー!?」 
「あー、とりゃーっぷぅ! わぁーい! ルーミィ、おなかぺっこぺこだおう!!」 
「おれも、おれも」 
「とりゃーっぷぅもかぁ?」 
「おう!  おなか、ぺっこぺこだおーう!!」 










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 パレアナ様サイトより、この作品を強奪してまいりましたっ!
 冬公演でたくさんの素晴らしいSSがUPされていたのですが、1作品をチョイス。
ルーミィの可愛さ引き立つ(?)トラップ視点の「雪だるま」ですv
 あぁ…っ!! 何度読んでも可愛らしいっvvv

 ビバ冬公演っ!
 ビバパレアナさんっ♪

 たっぷり楽しませていただきましたv ありがとうございます〜☆











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